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2010年4月 6日 (火)

『考えない人』宮沢章夫(新潮社)その他の話題

■少し前のことになるが「こどもネット伊那」の井上さんが、この間の「独演会」の感想アンケートを持ってきてくれた。



●いつも病院にいる時の先生と
ぜんぜんちがくて ビックリしました。
すごく おもしろかったです。

●いつも北原こどもクリニックではお世話になっています。
先生がとてもおもしろくてビックリしました。
絵本もとても楽しいのばかりでまた子供と読んでみたいと思いました!
ありがとうございました。


●パパ's ライブも楽器持参で親子で足を運ぶ程、ファンです!!
知らなかった絵本によって 世界が広がっていく喜びは、
子どもだけでなく 大人も同じです。

また近くでライブがある際には
是非 駆けつけます!
応援しています!


●今日、初めて参加させて頂きました。
先生の明るく楽しいお話が
最後なのは残念です。
ぜひ、早い時期に活動を再開してほしいと思います。
              (3ヵ月児の母より)

ほか多数、頂戴しました。みなさん、本当にありがとうございます。


■このアンケート用紙を読んだ妻はこう言った。

「いつも診察室ではどれだけ無愛想なの? もっと明るくしたら?」


いや、でもぼくは「明石家さんま」じゃないのだよ。
24時間ハイテンションを維持することはとても出来ない。


このはなしは以前にもしたことがあるが、
ぼくがまだ開業する前、厚生連富士見高原病院小児科一人医長だった時のことだ。

ある昼休みの病棟休憩室で、当時の病棟婦長だった樋口婦長が言った。
「先生ね、このあいだ娘を諏訪の歯医者に連れてったの。そしたら、この歯医者さん、あっかるいのよ! はいっ! どうしましたぁ〜? って大きな声でにこやかに、まるで歌うようにね。先生も見習ったら」って。


そう言われた僕は、そうかなるほどな、と思った。
で、次の日の朝のこと。
小児科外来にやって来た最初の患者さんに対して
思いっきりの笑顔と大きな声で、
「はい〜っ、どうしましました〜?」って言いながら
聴診器をあて続けた。


そしたら、午前10時半前に疲れ切ってしまったのだ。
人間、無理しちゃ続かないね。

ぼくの場合、無理してハイテンションに持ってくと、
翌日の反動が大きいのだ。
一気に落ち込む。
いわゆる「エネルギー保存の法則」ってヤツだね。
別な言い方をすれば、「ゾウの時間とネズミの時間」てヤツか?違うか。

いいじゃないの、めったに見られない「ぼくのハイテンション」を見れたのだから。


てな言い訳を、直ちに妻に返す能力を持ち合わせてはいないので、
妻にそう言われて、ぼくはただ黙ってしまう。
そうすると、妻は決まってこう言うのだ。

「いま、すっごく考えているようなふりして、実は何にも考えていないんでしょ?」

ドキッとしてしまう。
そのとおりなのだ。なにも考えていないのだった。
ポーズを取って気取ってみても、
いつでも妻はお見通しだったんだね。


そうさ、おいら、何時だって考えていません。
そう開き直ってみたいものだ。


そしたら、
『考えない人』宮沢章夫(新潮社)という、おいらにピッタシの本を見つけたので読んでみた。おもしろい。じつに面白い! そして、笑える。


 そうだ。考えたってろくなことはないのだ。考えるなんて無駄である。人生の展望。将来の生活設計。老後の見通し。考えるな。考えたところで、それほど大差はないのであって、考えたからってビル・ゲイツの住むような豪邸に住めるかといったらそんなばかなことはないし、
(『考えない人』宮沢章夫 /新潮社 39ページ)


■そうは書いてあるのだが、じつは宮沢章夫さんはよーく深ーく考える人だ。
このエッセイ集の中核をなす「考えない人」も、新潮社の季刊誌『考える人』に連載されていたもの。
ひとは「考えない」で行動することがよくあるが、それってどういうことなのか? ということを深く深く考察したエッセイなのだった。それでいて、別に何かためになることが書いてあるわけではないのだな。そこがいい。

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コメント

宮沢章夫さんの本は好きでよく読んで心が軽くなったりしたものでした。この方は考えることを考える人なんですよね。マルクスの資本論を読むという驚き本も出しているし。面白いですよね・・。

羊子さん どうもありがとうございます。

コメントがあったのに、記事を訂正追加しちゃいました。スミマセン。ぼくは宮沢さんの硬派な本は読んだことなくて、もっぱら脱力系のエッセイのみです。

今度は硬派なヤツにも挑戦してみますね。

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