舞台『陥没』シアターコクーン
■2月11日(土)に、東京で大学の同窓会があったので、久々に上京した。今まで4回開催されているという、我々4回生の同窓会に今回初めて僕も出席した。大学入学から40年が過ぎた。みな、58〜60歳(加藤さん、江原さんはもっと上だが)になる。懐かしい顔が50人以上そろった。みんな変わらないなぁ。
当時、谷田部町春日3丁目にあった木造2階建てアパート(家賃12,000円)「学都里荘(かとり荘)」の201号室に僕は住んでいたのだが、あの時の同じアパートの住人が、102号室の佐久間君以外全員顔をそろえたのは驚いたし、ほんと嬉しかった。その「学都里荘」も、ずいぶん前に取り壊されて今は存在しないのだそうだ。
楽しい時間を過ごさせていただき、幹事さん、本当にありがとうございました。
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■いささか飲み過ぎで、二日酔の翌日曜日。せっかくなので午前中に上野へ出て、国立科学博物館で「ラスコー展」を見る。期待が大きすぎたのか、正直イマイチだったな。
午後は渋谷へ移動して、東急文化村「シアターコクーン」でお芝居を観る。ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出『陥没』だ。当初同窓会は欠席するつもりでいたのだが、今年に入って急きょ出席を決めたので、このお芝居のチケットは取っておらず、仕方なく「立ち見」での観劇となった。
中2階、舞台上手側の横に並ぶ前から2番目のドアの4席並ぶ一番前の席の後ろに立つ。
舞台上手の端にあるカウンターとテレビは見えない位置だ。しかも、15分間の休憩を入れて3時間半の上演時間。二日酔に寝不足の体調不良に加えて立ちっぱなしなワケで、かなりキビシイ観劇条件だったのだけれど、いやぁ、面白かったなあ。笑ったなあ。さすが絶好調のケラさん。優れた役者さんを集めて見事な群像喜劇を完璧に仕上げてくれたのだった。『グッドバイ』といい『キネマと恋人』といい、ケラさんて、天才なんじゃないか。
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以下は、ツイートより。一部改変。
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シアターコクーンで『陥没』ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出を観てきた。立ち見で足疲れたけど面白かったなぁ。『グッドバイ』に続いての小池栄子。『キネマと恋人』直後の緒川たまき。『消失』以来の犬山イヌ子。まずは女優陣が圧倒的に素晴らしい。それから松岡茉優の初々しさ、高橋惠子の貫禄。
続き)もちろん男優陣もみな熱演だ。NHK朝ドラ『あさが来た』で知った山内圭哉、瀬戸康史。山内さんは NHKBSドラマ『奇跡の人』のイメージ。基本いい人なんだよ。瀬戸さんの弟役は『消失』みのすけ氏と同じ、知能は足りないけれど無垢でイノセントなトリックスター。彼が舞台に登場すると、劇場内の空気が変わる。凄い存在感だ。このお芝居では、彼がキーだと思った。
続き)ネタバレ注意! 小池栄子の父親役の山崎一。開幕早々に死んでしまうので驚いた。京大卒の山西惇さんは「ハンバートハンバート」好き。井上芳雄さんは、松本で観た『ひょっこりひょうたん島』よりぜんぜん良かった。そして生瀬勝久。舞台では初めて観た。凄いな。『べっぴんさん』とぜんぜん違うじゃん。
続き)緒川たまき。彼女は最高のコメディエンヌとして、もっともっと認識されていいんじゃないか。先だってNHKBS地域発ドラマ(山口編)を見た時にもそう思ったぞ。
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■シアターコクーンの舞台『陥没』のポスター。真ん中に描かれた女性のイラストは小池栄子に間違いない。じゃあ、右上から彼女を見下ろす男性は? 井上芳雄ではないな。山崎一だろう。
では、お芝居のタイトル『陥没』の意味はなにか? それは、オリンピックを3年後に控えた1961年の東京。行け行けどんどんの高度経済成長の波に上手く乗った人たちの陰で、変に「ためらい」が邪魔をして沈んでしまっている舞台の登場人物たち。
そして、同じく東京オリンピックを3年後に控えているのに、まったく明るい未来を想像できないで、むしろディストピアが眼前に迫っている「いま」を生きる僕ら自身の「へこんだ」思いではないのか。
だからこそ、ケラさんは主人公にあえて「夢」を語らせるのではないか。僕らは彼らの夢破れた現実を生きている。その陥没感が逆に56年前の「彼らの希望」を浮き上がらせる。いい時代だったのだ。
続き)それはつまり、明日はやって来ないかも知れないという、ほとんど、どうしようもない絶望感を抱えて生きるしかない「いま」のわれわれに、もしかして、それでも「明日はあるのかもしれない」と観劇後に確信させる不思議な力が、このお芝居には確かにあると思ったんだ。
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■終演後、夕暮れの家路を急ぐ観客たち(ケラさんのことなんて全く知らない、井上芳雄ファンのおばさん達に違いないぞ)の会話が聞こえてくる。「楽しかったね!」「面白かったね!」って、みなニコニコの笑顔だ。幸せなお芝居だな。まだまだ上演は続きます。当日券も立ち見券もあるみたいなので、お芝居好きの方はぜひ、劇場シアターコクーンへ足をはこんでみて下さい。
いい観劇体験だったと思える作品でした。地方在住の私は、新幹線で往復4時間の行程を経ての観劇ですが長い移動時間もあっという間と思える程、味わいある劇でした。とくに山崎一さんの愛娘への愛(ポスター画はこの二人だと私も思いす)、ほか従妹愛、兄弟愛、恋愛、夫婦愛など様々な愛が、時代に乗り遅れ手入れも行き届かぬ”陥没感”あるホテルロビーにて、鮮やかに明かされる展開は見事で、嗅覚を刺激される演出や随所に現れる懐かしい昭和感など、舞台を思い出すと訳もなく押し寄せる感情や涙を、月明りを見つめこらえながらの道中でした。こうした庶民の愛情や希望、”上を向いて歩こう心”こそ、戦後の発展を支えた原動力なのかと思い巡らし、そんなこんなを笑い溢れる”楽しい”舞台に仕上げるケラさんの才能に感動しながら劇場を後にした、お恥ずかしながらケラさん舞台を初めて拝見した私も”井上芳雄ファンのおばさん”の一人です。
投稿: 観劇体験が浅い者で恐縮です | 2017年2月16日 (木) 12:05
観劇体験が浅い者で恐縮です さん。コメントありがとうございました! ぼくも地方在住者なので、ずっと「市民劇場」のお世話になってきたのですが、それだと、本当に観たいお芝居が観れないのです。東京在住の人がうらやましいです。
ぼくは、子供たちの前で絵本の読み聞かせを10年来やって来たのですが、役者さんが舞台に一度立つと役者を辞められなくなるっていう気持ちが分かるような気がします。
演者と観客とが一体となって、あの劇場の「場」が出来上がるのですね。あそこに立ち会えて本当によかったと思える、幸福なお芝居でした。
投稿: しろくま | 2017年2月17日 (金) 00:05