菊地成孔は、やっぱ天才だな。
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■『時事ネタ嫌い』を読み終わって、著者の絶望と諦観が直に伝染してしまい、めちゃくちゃブルーな気分に陥ってしまった。
『時事ネタ嫌い』菊地成孔(文庫ぎんが堂)。今からたった5年前のことだというのに、その当時の雰囲気をすっかり忘れてしまっている自分に驚く。例えば、東日本大震災が起こる少し前の日本のことを、あなた、憶えていますか? ぼくは「この本」を読んで思い出しました。当時の日本国民のほとんどが、民主党政権に飽き飽きしていたことに。鳩山(宇宙人)首相が辞任した後を継いだのが、そうそう、菅直人だった。
彼は、財務省官僚に刷り込まれた消費税アップを公言してしまう。おいおい、官僚の言いなりロボットにだけはなるまいと誓って政権についたんじゃなかったっけ。民主党政権が失敗した原因は簡単だ。戦後日本がアメリカの属国であることを知らない鳩山さんが沖縄で発言した内容に、アメリカ本国が激怒し、鉄槌をくらわしたことと、長妻元厚生労働大臣が東大卒エリート官僚を鼻からバカにしきって、政治主導の名の下に突っ走ろうとし、部下の官僚からまんまと足下をすくわれたこと。
つまりは、霞ヶ関は政治家が動かしていると勘違いしてしまった民主党議員たちが、幼稚園児ほどの知性と経験もなかったことによるワケだ。アメリカと官僚に逆らっちゃぁ、ダメでしょ。政治をやろうとするなら。
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■じゃぁ、アメリカ従属で言われるままに政治をすれば、それで上手くいくのかというと、今やとんでもない事態に陥ってしまっているわけで、『戦後入門』加藤典洋(ちくま新書)を読みながら、これからわれわれはどうしていったらよいのか勉強しているところです。
ブルーな気分のところに、『小田嶋隆の ア・ピース・オブ・警句』より、11月13日(金)の「安倍政権支持率回復の理由」を読んだら、ますます暗くなってしまった。小田嶋さんは「そこ」まではっきりと言っていないけれど、安倍さんは戦争も始めちゃえば国民は仕方なくついてくると思っているんじゃないか。
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■それにしても、菊地成孔氏の文章は麻薬的中毒性がある。いつまでもずっと読んでいたくなるのだ。村上春樹氏のエッセイを読んでいる時にも同じように感じるから、文章のリズムがジャズ的グルーヴ感にあふれているってことなのだろう。
続けて、最近出たばかりの『レクイエムの名手』(亜紀書房)を入手し、さっそく読み始めた。追悼されている人々がみな、ぼくも良く知る人たちばかりだから堪らない。我慢できなくて、まえがきを読んですぐ「あとがきにかえて」を読む。濃いなぁ、菊地さん。凄すぎるぞ!
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菊地成孔『レクイエムの名手』(亜紀書房)を読み始める。めちゃくちゃ面白い。追悼文集に対して「面白い」は失礼かもしれないが、本当のことだから仕方がない。スイングジャーナル元編集長、中山康樹氏の項に登場する『かんちがい音楽評論』中山康樹(彩流社)が未読のまま手元にあって笑った。
続き)巻頭の「二つの訃報」が、とにかく濃い。菊地さんの他を圧倒する文章を久々に読んで感嘆の溜息をついた。だが、待てよ。これ読んだことあるぞって思ったら、『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール』菊地成孔(小学館文庫)からの再録だった。
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