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2012年10月16日 (火)

第13回 柳家喬太郎独演会 駒ヶ根・安楽寺

■昨日の10月15日(月)は、年に一度の「駒ヶ根安楽寺・柳家喬太郎独演会」。月曜日だったからね、ちょっと今回は無理だと思ってた。


でも、ラッキーなことに午後は案外患者さんが少なくて、午後6時前で診療が終了。急いで着替えて一路駒ヶ根へ。文化会館の駐車場に車を止めて走って安楽寺。18:45 着。よかった間に合った。


しかし、安楽寺本堂はすでに満杯だった。1人だったから、あわよくば前の方にすすっと出て行って隙間を見つけ座ってしまおうと考えていたのだが、とても無理。仕方なく、最後列の窓際の椅子に着席。300人以上は入ってるかな?って思ったら、安楽寺住職の話では 450人来てたんだって。もうビックリ。それにしても大変な人気じゃないか、喬太郎さん。


■開口一番は、ふつうお供で同行した師匠の弟子(前座)が務めるものだが、喬太郎師に弟子はいない。で、最初に高座に上がったのは、この6月に落語芸術協会の真打ちに昇進した春風亭愛橋師匠。


真打ちの落語家に対して「開口一番」なんて言ったら失礼なんだが、正直まだまだ喬太郎師の胸を借りている感じの愛橋師だったなぁ。もっと自信持って堂々と落語やればいいのに。演目は「かぼちゃ屋」。愛橋師得意の「与太郎もの」だ。


まだ、昔昔亭健太郎だった頃、あれは何年前だったか、伊那市駅前に酒蔵を持つ「漆戸酒造」での新酒お披露目落語会に家族4人で行ったことがあった。あの時は「牛ほめ」をやってくれた。妙になよなよした所作で、妙ちくりんな髪型、でも、独特な「フラ」があって、これはこれで面白いぞ! そう感じた。


あのまま突っ走ればよいのだよ。でも、昨日の愛橋師は、450人の聴衆を前にして、やたら肩に力が入っていた。地元だし、真打ち披露ではいろいろと世話になった人ばかりだったからね。戴いた帯とか、お祝いの後ろ幕とか。言及しとかなくちゃいけないことが多すぎた。だからか、本篇の落語が散漫になってしまったのかな。

伊那北高校の後輩だし、これからも一生懸命応援していきますよ。頑張って欲しいな。


■さて、喬太郎師はというと、貫禄の高座であった。


まくらで、こうして安楽寺のご本尊に背を向けて落語をしていると、いつかバチが当たるんじゃないかって思ってるんですよ。って話から、埼玉のお寺であった落語会の話へ。そこのお寺では本堂を使わずに、お寺の境内が客席だったんだって。で、演者は境内に面した「縁側」に座って噺した。

ところが、にわかに大雨が! って話。笑っちゃったなぁ。


そこから本篇の「蒟蒻問答」へ。


この噺、いままで正直それほど面白いと思ったことがない。ところが、喬太郎師の「こんにゃく問答」の面白いことと言ったら、あんた。もう大笑いでしたぜ。放送禁止用語もビシバシ飛び交って、いやぁ、勢いがあったなぁ。


喬太郎師の2席目は「へっつい幽霊」。

この噺、好きなんだ。ぼくが持ってる音源は、先代桂三木助のと、立川志の輔師のCD。何せ、三木助師は「ほんもの」の博打打ちだったからね。


喬太郎師は、基本的に古典落語を演じるときはあまりいじらない。先輩から教わった通りに崩さずに演じる。その態度がぼくは好きだ。最近は「いじりすぎる」落語家がやたら多いからね。本来、数百年の歴史ある噺の骨格がすでに出来上がっていて、それだけで面白いワケだから、変に崩す必要はないのだ。古典落語はね。


喬太郎師はそのことをよーく分かっている。


でも、今回はちょっとだけ「くすぐり」を入れてたな。最初に「へっつい」を買ってった客が、しゃべる度に「……道具屋!」と必ず語尾に付けるのだ。これがしつこい。


ぼくはこのくだりを聴きながら、Sさんっていう、いつも娘さんを2人連れてくるおかあさんを思い出していた。このおかあさん、必ず語尾に「……先生!」って付けるのだ。「昨日の夜に熱がでたんですよ、先生。夜中にうなされて苦しそうでした、先生。今朝はごはんを食べたんですけど、先生。そのあと吐いちゃったんです先生。」ってね。


そしたら、久しぶりに「そのSさん」が今日の午前中、娘2人を連れて受診したのだ。申し訳ないけど、ひとりで笑ってしまったよ。


450人の聴衆がみな大笑いした高座だった。大満足でした。やっぱ、ナマの落語はいいなぁ。これだけの人気落語会になったのも、すべて「駒喬会」の皆さまのご苦労あってのものだ。ほんと感謝してます。

来年は6月とのこと。今から楽しみだぞ。


以下、昨日つぶやいたツイートを転載。

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駒ヶ根「安楽寺」での第13回柳家喬太郎独演会から大満足で帰ってきたら、ブランコが逆転満塁ホームランを打っていた。びっくり。ちなみに今夜の演目は、春風亭愛嬌師が「南瓜屋」。喬太郎師は「蒟蒻問答」と「へっつい幽霊」。いやぁ、笑った笑った。


続き)まぁ、これは「ナマ」で落語を聴いた後の帰り道で毎回味わう感覚なのだが、得も言われぬ「幸福感」に満たされる訳だ。何なんだろう? この満足感。落語って、やっぱ凄いぞ。安楽寺住職の話では、今宵の本堂に450人もの人々がつめかけたという。恐るべき集客力だ、喬太郎師。


以前テレビでだったか、喬太郎師がまくらで駒ヶ根の独演会の話をしていた。会の主催者が興奮して言ったという。「喬太郎さん!300人以上入ったってことは、駒ヶ根市の人口の1%だ。東京で言うと10万人の集客ですよ!」ってね。

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