今月のこの一曲『'Cause We've Been Together』アン・サリー
■今週の日曜日はいろいろと用があって、家族4人で朝9時過ぎに伊那を発ち長野まで行ってきた。帰りには松本に寄ってもう一つの用を済ませて自宅へ帰り着いたのは夜の9時前だった。疲れたが充実した一日だったな。 松本では、妻と次男がリハーサルに行ってる間に、ぼくと長男はいつもの「ほんやらどお」へ行って中古CDを物色。長男はウルフルズのベスト盤を、ぼくはエグベルト・ジスモンチのECM盤と、アン・サリー『デイ・ドリーム』を1000円未満の安価でゲットした。 アン・サリーの「このCD」は、知ってる曲が一つもなかったから、じつは聴いたことなかったのだが、なんだ、めちゃくちゃイイじゃん。 じつに渋い選曲で、1970年代日本のレアグルーブのカヴァーが特に聴かせるのだな。細野晴臣「三時の子守歌」、佐藤奈々子&佐野元春「週末のハイウェイ」、吉田美奈子「レインボー・シー・ライン」。そうして、りりィの『'Cause We've Been Together』。オリジナルはコレです。
YouTube: Lily - 'Cause We've been together
でもこの曲は、アン・サリーのカヴァーのほうがずっといいな。 YouTube にもあったみたいだが、今は見れないのが残念。サビの歌詞がこれだ。
JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました
このCDを繰り返し聴くうちに、「オー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、行かないで」というフレーズ。以前に何度も目にしたことあるぞ!? って気がついたのだな。 そう、映画にもなった、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』(ハヤカワ epi 文庫)だ。 主人公のキャシー・Hがずっと大切にしていてなくしてしまったカセット・テープ。ジュディー・ブリッジウォーターが 1956年に録音した『夜に聞く歌』A面3曲目に入っていた曲『わたしを離さないで』の歌詞といっしょじゃん。
スローで、ミッドナイトで、アメリカン。「ネバーレットミーゴー……オー、ベイビー、ベイビー……わたしを離さないで……」このリフレインが何度も繰り返されます。わたしは十一歳で、それまで音楽などあまり聞いたことありませんでしたが、この曲にはなぜか惹かれました。いつでもすぐ聞けるように、必ずこの曲の頭までテープを巻き戻しておきました。(『わたしを離さないで』p110)
■カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』に関しては、この「ネバーレットミーゴー」って曲がどんな曲なのか、以前にもしつこく考えたことがある。と言うのも、ジャズのスタンダードに「Never Let Me Go」って曲が実際に存在していて、インストでは、ビル・エバンズやキース・ジャレット・トリオ。ヴォーカル版では、ナット・キング・コールやアイリン・クラール、ジェーン・モンハイト。 でも、このオリジナルの「Never Let Me Go」って曲には「オー、ベイビー、ベイビー……わたしを離さないで……」なんてフレーズはどこにもないのだった。だからここの「2006/11/15」で言っているように、本当に"Never Let Me Go" だったのだろうか? って疑問がわくのだ。 この Never Let Me Go よりも、「'Cause We've Been Together」のほうが断然「スローで、ミッドナイトで、アメリカン」なんじゃないか? ぼくはいま、確信を持って言おう。あの時、村上春樹氏がカズオ・イシグロ氏にプレゼントしたCDとは、アン・サリーの『デイドリーム』だったに違いない! と。ほんとかよ(^^;;
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