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2011年4月 6日 (水)

『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』ベン・メズリック(青志社)

■「Hard times come again no more」をボブ・ディランがカヴァーして唄ったCDがあると聞いて調べたら、1992年にでた『GOOD AS I BEEN TO YOU』の7曲目に入っていることが判った。一昨日、テルメに行く前に伊那のブックオフに立ち寄ると、なんと「このCD」が 920円で売られていた。もちろん即購入。ボブ・ディランがギター1本とハーモニカだけで弾き語りしたCDだった。そんな彼の「辛いとき」は、まさに彼そのものの唄になっていたな。


■「評伝」を読むのが好きだ。いま読んでいるのは『知られざる魯山人』山田和(集英社文庫)で、まだ200ページ。前半の1/3をようやく読了した。この本はなかなか読み進まないのだ。気楽に読み飛ばせないから。でも、すっごく面白い。とにかく、魯山人という人がメチャクチャ凄くて、あの『美味しんぼ』に登場する海原遊山のモデルになった人ぐらいの知識しかなかったぼくは、ただただ驚くばかりだ。若干21歳にして「日本美術協会」主催の美術展覧会に出品した「千字文」が見事褒状一等二席に入選し、書家として始まった彼の経歴が、篆刻家、骨董の目利き、美食家料理人、陶芸家と次々と変遷しながらも、その全ての分野で超一流たりえた天才。しかも、全て独学。なんちゅう人だ!?


次に読む予定の本も評伝で、『コルトレーン ジャズの殉教者』藤岡靖洋(岩波新書)だ。この本も期待しているのだな。


■しかし、評伝というのは既に故人となった偉人に対して書かれるものだと思っていたが、まだ20代でバリバリの現役若手社長で天才ユダヤ系アメリカ人であるマーク・ザッカーバーグに関して初めて書かれた評伝がこの本、『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』ベン・メズリック(青志社)だ。しかも、話題の映画『ソーシャル・ネットワーク』の原作本ときている。

ぼくもつい最近、流行の「facebook」に登録したのだが、どんなふうに使ったらいいのか皆目わからず、2冊ほどガイドブックも買ってきてパラパラ読んではみたが、ぜんぜんイメージが湧かないのだ。困ったぞ! そう思って、じゃぁ「facebook」が始まった、その起源をを辿れば判るかもしれないと「この本」を読んでみたのだった。

結果は、面白くて一気に読了した。訳文がこなれていて読み易かったし、いろんな思惑の人たちがうごめく様子がリアルでね。でも、「facebook」の使い方はぜんぜん判らなかった。当たり前か……


著者のベン・メズリック氏もハーバード出身だから、まるで「見てきた」みたいな描写にリアリティがあるのだな。それから、エドゥアルド・サヴェリンがニワトリの箱を抱えて出席する基礎単位の講義の雰囲気は、サンデル教授の講義をNHKテレビで見ていたので実にリアルに目に浮かんだ。あと、超エリートが集うハーバード大学の中でもさらなる選ばれた特別の伝統的な秘密クラブが幾つもあって、その結社に入れれば大学卒業後の成功が既に約束されているという事実が、日本の大学では考えられないだけに面白いと思ったし、アメリカの超エリート階級の結束の強さを思い知らされ、ちょっと怖いとも感じたな。


この本の最大の弱点は、著者が主人公のマーク・ザッカーバーグ氏から嫌われて、直接インタビューできなかったことだ。彼に裏切られた双子のウィンクルボス兄弟や、ユダヤ系ブラジル人のエドゥアルド・サヴェリン、それに、facebook 初代社長ショーン・パーカーだけから得た情報を元に「この本」は書かれている。だから、マーク・ザッカーバーグ氏の人となりは最初からバイアスがかかっていて批判的だ。でも、映画で言われているほど、この本を読んだ限りではマーク・ザッカーバーグ氏はアスペルガーっぽくはないぞ。女子が苦手な「おたく」ではあるけどね。

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